2020/05/16
「スリランカはインドとFTAを結んでいるから産業が延びる!」
と言われるのを耳にすることがあります。
今回は、
「ところでFTAって?」
「どうしてそれで産業が盛んになるの?」
というお話です。
回りくどいですが、まずはインドのお話から。。。
スリランカに自動車を輸入するときの税金が高いのは以前のコラムに書きました。
『新車プリウスが600万以上!それでも売れる日本車ビジネスの裏側』
実はインドでは車に限らず多くのモノに対する輸入関税が高いのです。
品目にもよりますがいろんな名目の関税をすべて足すと約30%。
さらに州税 (VAT) の15%が乗ると、商品価格は50%近く跳ね上がります。
そのため外国製品はどうしても高価になってしまいます。
ではそんな外国製品を「なんとか安く手に入れたい!」
と考える人が多くなると何が起きるか?
遭遇された方も少なくないと思いますが、
フリーポートであるシンガポールや香港の空港の
インド便チェックインカウンター周辺には、
手押しカートにテレビを載せた人たちを大勢見かけます。
(写真と記事は直接関係ありません。)
実はこの人たち、インドで待つ家族のためにテレビを買って帰るわけではないのです。
(中にはそういう人たちもいるでしょうが)
この人たちは、手持ちで商品を運ぶ ”ハンドキャリヤー” と呼ばれます。
テレビ以外にもカメラなどのいろんな製品を運んでいます。
たいていは買った時の箱から製品を取り出して布でぐるぐる巻きにして
カバンに詰め込んでいるのです。
(写真と記事は直接関係ありません。)
本当はインドに着いたときにすべての輸入関税を払わなければいけません。
しかし、いろいろな手法を使って税を安く逃れているのです。
(ここでは詳細は書きません。脱税行為です。絶対にマネしないでください!)
そしてインド国内で正規品よりも安く売るというビジネスを展開しています。
飛行機代がかかるじゃないかと言われると思いますが、
同時にいろんな商品を運んだり(小さくて価格の高いカメラなど)
安く回数券を仕入れるなどして極限までコストを下げているのです。
ところがそのせいで正規品が売れないのです。。。
本来ならちゃんと保証書のついた正規品を消費者も欲しがるはずですが、
あまりの大きな価格差に非正規品を選んでしまうのです。
まともに正規品を売る方はたいへんです。
インドに輸入する際に正当に関税を払った後
マージンを極限まで減らして販売店に卸していますが
それでもなお価格差は解消できません。
自社の非正規ルートの製品と戦うために
正規ルートの価格を下げるというなんとも不毛な争いです。
話をスリランカのFTAに戻します。
FTAとは自由貿易協定のこと。
インドとスリランカのFTAは1998年に締結され、2000年に発効しています。
それから一部の品目を除いて段階的に関税を撤廃して今に至ります。
スリランカからインドに輸入する際、
逆にインドからスリランカに輸入する際には
関税の優遇を受けることができます。
第三国から来た製品がスリランカを経由するだけではだめですが、
例えば部品や材料をスリランカに輸入して
(この時に関税がかかりますが、完成品に比べると税率は低い)
スリランカで加工して完成させた商品をインドに輸出すると、
インドでは関税がかからない、という仕組みを利用できます。
正規販売ルートの、乾いたタオルを絞るような涙ぐましい努力がこれで解決するのです。
FTAによってもちろん二国間の貿易も盛んになるし、
大消費地であるインドを主なマーケットにしている企業が
貿易ハブでもあるスリランカ国内に工場を持ってくるので工業も盛んになります。
歴史的にいろんな紛争もありますが、
地理的にも経済的にも切っても切れないのがスリランカとインドなのです。
ところでここに書いたハンドキャリー貿易。
インドだけではなくスリランカ相手でもおこなわれています。
(写真は記事とは直接関係ありません。)
スリランカでも関税は高いですからね。
普通に電気屋で売られているのでなかなか気がつきませんが・・・。